ただいま片倉シルク製のオーダーフレームで組まれた約40年前のランドナーのレストアをさせていただいております。
オーナー様が学生時代に各地を旅したランドナーですが、その後ご自宅で保管されていたものです。

最初に拝見した時、車体に括り付けられていた黄色いカップに目が留まりました。
止めていたワイヤーが固まってしまい、取れなくなっていたのですが、なぜかとても心が魅かれて「すごく可愛いですね!」と言ってしまいました。

オーナー様によると学生時代に四国を旅した時、適当に入ったスーパーで購入されたものだそうです。
不思議な事に、学生時代のオーナー様が楽しく旅をされ、そして「そういえばカップが欲しいな」と思い、スーパーに入って選んでいる姿が自分の思い出の映像のように頭に浮かんできました。

それからオーナー様とランドナーと共に旅をし、やがて走る機会がなくなったランドナーと一緒に眠っていたカップ。
そしてご縁あって当店で目が覚めたカップ、可愛いなぁ!
ワイヤーから外された姿は、なんだかウーンと伸びをしているような気がします。

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レストアの見積もり費用は新車を購入できる程のものになってしまいましたので、オーナー様も迷われたようですが、やはりレストアをお選びになられました。
レストア後に再び走られたら、きっと沢山の思い出が浮かんでくると思います。
これがレストアの魅力なのではないか……と黄色いカップを眺めながらそんな事を考えました。

オーナー様の奥様は楽しい方のようで「この古い自転車を直すの?女だったら40年も待っていないわよ~」と仰ったそうですが、大丈夫、自転車は「ご主人様、お待ちしていましたよ!」と喜ぶことでしょう。
そんなお仕事をさせていただけて嬉しく思います